ラジカルと基(radicals and groups)
化学の翻訳をしていると
RCOOH, where R represents a methyl radical, … や
RCOOH, where R represents a methyl group, …
のような文章をよく見かけます。
赤字部分はどちらもメチル基と訳せそうですが、「Radical」と「Group」にはどのような違いがあるのでしょうか?
式中の記号は「R」なのだから、「radical」としたほうがよいでしょうか?
調べてみたので以下に紹介します。
IUPACのGOLD BOOKに、「Radical」について以下のような記載がありました(和訳はブログ作成者によるもの)。
Radical (Free radical)
A molecular entity such as ·CH3, ·SnH3, Cl· possessing an unpaired electron.(不対電子を持つ、·CH3、·SnH3、Cl·などの分子実体)
In the past, the term 'radical’ was used to designate a substituent group bound to a molecular entity, as opposed to 'free radical', which nowadays is simply called radical.(過去には、「radical(ラジカル)」という用語は、今日では単に「radical(ラジカル)」と呼ばれる「free radical(フリーラジカル/遊離基)」とは対照的に、分子実体に結合した置換基を示すのに用いられた。)The bound entities may be called groups or substituents, but should no longer be called radicals.(この結合した実体は、「groups (基)」や「substituents(置換基)」と呼ばれ得るが、もはや「ラジカル」と呼ばれるべきではない。)
このように、過去には「基」や「置換基」を指すのに「radical(ラジカル)」が用いられていたようですが、
現在では「radical(ラジカル)」は、「unpaired electron(不対電子)」をもつもの、即ち、昔の「フリーラジカル/遊離基」を指すもととされるようです。
式中の記号「R」は、昔から使用されているのでそのまま残っているようです(ResidueのRではないかという方もいます)。
従って、自分で英文を書く時には、「基」や「置換基」には「Group」や「Substituent」を用いるとよいと思います。
但し、まだまだこの使用法が十分に浸透しているとはいえず、「基」の意味で「Radical」が使われていることもよくあるので、他人の英文に「radical」と記載されていた場合には、「フリーラジカル/遊離基」であるのか、「基」や「置換基」であるのかを適宜確認の上理解する必要があります。
結論
「基」に「Radical」を用いるのは昔の表現である。
自分で英文を書く際には「基」には「Radical」ではなく「Group」を用いる。
英文に「Radical」がが使用されている場合は、「遊離基」と、「基」や「置換基」との双方の可能性を考慮する。
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