ラジカルと基(radicals and groups)

2020年2月25日

化学の翻訳をしていると

RCOOH, where R represents a methyl radical, … や

RCOOH, where R represents a methyl group,

のような文章をよく見かけます。

赤字部分はどちらもメチル基と訳せそうですが、「Radical」と「Group」にはどのような違いがあるのでしょうか?

式中の記号は「R」なのだから、「radical」としたほうがよいでしょうか?

調べてみたので以下に紹介します。

 

IUPACのGOLD BOOKに、「Radical」について以下のような記載がありました(和訳はブログ作成者によるもの)。

Radical (Free radical)

A molecular entity  such as ·CH3·SnH3Cl· possessing an unpaired electron.
(不対電子を持つ、·CH3·SnH3Cl·などの分子実体)
(中略)
In the past, the term 'radical’ was used to designate a substituent group bound to a molecular entity, as opposed to 'free radical', which nowadays is simply called radical.
(過去には、「radical(ラジカル)」という用語は、今日では単に「radical(ラジカル)」と呼ばれる「free radical(フリーラジカル/遊離基)」とは対照的に、分子実体に結合した置換基を示すのに用いられた。)
The bound entities may be called groups or substituents, but should no longer be called radicals. 
(この結合した実体は、「groups (基)」や「substituents(置換基)」と呼ばれ得るが、もはや「ラジカル」と呼ばれるべきではない。)

 

このように、過去には「基」や「置換基」を指すのに「radical(ラジカル)」が用いられていたようですが、

現在では「radical(ラジカル)」は、「unpaired electron(不対電子)」をもつもの、即ち、昔の「フリーラジカル/遊離基」を指すもととされるようです。

式中の記号「R」は、昔から使用されているのでそのまま残っているようです(ResidueのRではないかという方もいます)。

 

従って、自分で英文を書く時には、「基」や「置換基」には「Group」や「Substituent」を用いるとよいと思います。

但し、まだまだこの使用法が十分に浸透しているとはいえず、「基」の意味で「Radical」が使われていることもよくあるので、他人の英文に「radical」と記載されていた場合には、「フリーラジカル/遊離基」であるのか、「基」や「置換基」であるのかを適宜確認の上理解する必要があります。

 

結論

「基」に「Radical」を用いるのは昔の表現である。

自分で英文を書く際には「基」には「Radical」ではなく「Group」を用いる。

英文に「Radical」がが使用されている場合は、「遊離基」と、「基」や「置換基」との双方の可能性を考慮する。

 

 

 

 

 

 

翻訳

Posted by Dinosaur0206